学校へのEdTech導入、負の点も考慮して行ってほしい 2


今、日本の学校現場には教育のIT化、デジタル化が急ピッチで進められています。

「コロナが起きたから」というのも理由の1つですが、
コロナ以前からも、『GIGA(ギガ)スクール構想』という名で、文科省が力を入れて進めてきており、
一方、それだけなく、
経産省側からも、教育事業者の要望からか「EdTech(エドテク)導入補助金」、「未来の教室」などの名前で、学校教育のIT化、Edtech導入が、補助金つきでイケイケドンドン進められようとしています。

私が経営する会社ECOM(イーコム)は、EdTech企業の括りなので、一見、この流れは、ととても喜ばしいように見えます。ニーズがあり、世の中でも求められている、まさに時流にのった商売をしているように見えます。

実際、この時流を狙って、多くの企業が、Edtech(教育×IT)へ、商魂たくましく、ここ最近一気に、この業界へ参入しにきています。

しかし、私は、今の教育の「デジタル化邁進」、「エドテク導入万歳~!」の兆候に、素直に喜べてはいないところがあります。

なぜなら、今進めているデジタル教育で、子供の教育に目立った効果が出ていないからです!

効果どころか、Dataでは、マイナスの効果が多いのが状況です。

実際、日本より先行して教育のデジタル化を推進した、中国、韓国は、政策を取りやめ、教育現場のデジタル化に規制をかけ始めています。

遅れてスタートした日本でも、実証実験で有意なプラスの効果がでず、かえって教育上よくないマイナスの効果が散見される次第。

検索で、
教育 デジタル 失敗 佐賀県
などで検索する、情報出てきます。

*特に佐賀県は、民間と組んで教育のデジタル化を日本一推進した県として知られていますが、学力テストは、2019年の結果で全国43位とワースト圏。一方で、教育のデジタル化が日本一進んでいない秋田県は、学力テストで全国一位とのこと。

そこへ来て、最近、新潮が掲載した記事
「「デジタル教科書」は子どもの学力を下げる? 先行する韓国では「学習効果なし」」は、
我々、EdTech企業に、胸熱くなる記事でとても勉強になりました。

以上のように、ICT教育には生徒の興味を引く効果はあっても、学習効果としては表れていないし、効果が認められる場合でも、少なくとも現在検証できた範囲では学力下位層に限られます。

 ICT教育が学力を向上させない理由は何でしょうか。これは情報量と教育効果の関係に起因するものと思います。簡単に言えば、ICT教育は視覚情報量が多過ぎて、情報量が少ない紙を読む場合に比べて、深く考えることが難しいと考えられます。

記事中のこの部分は重要なので、引用しておきましたが、全体を要約すると、

1.デジタル教育は、深い洞察、思考力ができなくなる。
理由は、情報過多や、ノイズが多いため。

2.ICT教育によって、生徒はもの珍しさに関心はもつが、教育効果は薄い。相関関係はないか、マイナス。あったとしても、成績下位層(情報インプットがメイン。深い洞察までいかない子供)にのみ。

の2点でした。

まず、1について、納得です。

私自身も深く考えたい時、ノイズをへらすべく、大勢でおしゃべりしたり、ミーティングなどせず、一人の時間を大事にします(孤独は人を成長させる?!)。

1人で、静かに。時には歩きながら、考え。そうして、深いアイデアや、プランを出していきます。

ノイズに敏感な子供なら、なおさら影響がでるのでしょう。

2については、読み方を変えると、情報のインプットメインのタスクには、デジタルを使った教育の効果があると読むことができます。

この記事を書いてきて、EdTech会社の社長なのに、Edtech反対って何を言っているんだ?
と思われるかもしれませんが、世の中1か0ではないです。

答えは、中間にあることが多く、今回もそうだと思っています。

教育現場におけるIT化は、よくない面もあっても、よい面もあります。1,0ではないです。

とりわけ学校現場の先生は、大量のアナログ仕事で疲弊していることも聞いているので、子供利用とは別の、先生と保護者のラインの、業務用ITシステムの投資は、価値があると思います。

そして、子供向けでも、国語、算数、理科といった深い洞察が必要な科目は、非デジタルを推奨しますが、暗記中心のインプット型は、アナログでない、デジタルの方が効果が発揮できる科目もあります。

例えば、歴史の暗記部分は、よく自分は、映像の世紀などの動画を見て、流れや歴史のダイナミズムを感じながら暗記していました。
もちろん、影響の考察、歴史の意義などは、ノンデジタルでトライする仕組みが必要。

そして、語学。

語学は、95%近くが暗記であり、それは文字ではなく、『音とイメージ』中心で覚えていく必要があります。

デジタルならば、それが効率的に可能であり、唯一100%デジタルを学校現場に持ち込んでよい科目だと自信を持っています。

ですので、今、日本の学校現場のIT導入に求められているのは、

海外や、国内先行事例の失敗から学び、必要なEdtech投資はどの領域かをしっかり学んだ上で行うべきだと思っています。

しかし、どうも、企業利権が絡んでいるのか、EdTech導入の不都合な真実には目をつむり、とにかく何が何でも学校教育をデジタル化させることが目的となっているようです。

目的は、教育のデジタル化ではなく、子供の学力アップ、ひいては、AI時代にAIに負けない総合的な思考力、洞察力を身につけることのはずです。

それは、教育のデジタル化をすることで、深い洞察や総合的な思考力が身につかなくならあべこべなことをしかねないのが、今の日本の周回遅れデジタル教育の現状なのではと危惧しています。


About 成田 勝行

株式会社イーコミュニケーション代表取締役社長。 慶應義塾大学総合政策学部(SFC)卒業後、世界最大のコンサルティング会社Accentureに新卒入社。退社後、暫くダンス活動(Ballet, Jazz, Hiphop, House, Break'in)に専念。2005年イーコミュニケーション創業。 趣味は、経済ウォッチングと言語習得。 踊れて、経済が語れる、経営者という領域で、世界一を密かに目指す。

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2 thoughts on “学校へのEdTech導入、負の点も考慮して行ってほしい

  • 坂本泰樹

    非常に含蓄のある記事を読ませていただきました。
    特に、
    ~海外や、国内先行事例の失敗から学び、必要なEdtech投資はどの領域かをしっかり学んだ上で行うべきだと思っています。~
    の部分に賛同です。
    また、
    ~目的は、教育のデジタル化ではなく、子供の学力アップ、ひいては、AI時代にAIに負けない総合的な思考力、洞察力を身につけることのはずです。~
    という問いかけにはハッとさせられます。
    ICT教育産業の人は利権にまみれた人ばかりなのではないか、と偏見を持っていましたが、このようなしっかりとした考えの社長さんがおられるということ自体が勉強になり、何か勇気づけられる思いにもなりました。
    ありがとうございました。