最近、『今、日本では子供の6人に1人が貧困状態』というニュースや特集を、TVや新聞で頻繁に目にするようになりました。
また、私のいる教育業界でも、起業家が、
『今、日本の子供の6人に1人が貧困!日本の子供の貧困問題はこんなに深刻なんですよ。』
『これを解決するため、私は教育分野で起業しました!!』
とインタビューや、プレスリリースで語っているのをよく耳にします。
『子どもの貧困、今、日本で6人に1人の子供が・・・』
と数値付きで聞くと、リアリティが出るのか、思わず、
「えぇ?!本当か? 今時の小・中・高校生は、自分がコミュニケーション取る機会がないからって、そんな状況になっていたのか?!」
「40人クラスだったら、6,7人くらい貧困状態?!」
と聞いてびっくりしました。
しかし、よくよく調べてみると、
下記の3つの点で誤解が蔓延しているように思えます。
1.”相対的”貧困とは、私達がイメージする貧困と異なる。
これは、既に知られてきていますが、ここで言う貧困とは、”相対的”貧困であって、いわゆる私達が考える(絶対的)貧困とは違うようです。
貧困と聞くと、条件反射で、インドやフィリピンで死にそうにな状況にある子供たちや、靴が買えない、食事も満足にとれない状況を想像していました。
しかし、マスコミや起業家が喧伝する、今回の貧困とは、相対的貧困という定義で、
誤解を恐れずに簡略化して言うと、
日本にいる世帯可処分所得収入の中央値(*平均値と異なる)の半分以下にいる人たちを貧困と定義して扱っているそうです。
*実際には、世帯人数を平方根で割ったりして数値出しているそうです。
その結果、
おおよそ1人平均に直すと、月1300ドル(月13万円くらい)以下の実質月収。=税金など考慮すると額面17.5万円くらいの収入以下の人が貧困層
という位置づけ。
世帯収入に直すと額面月25万くらいになるのかな?
なので、
生活保護で毎月お金をもらっている人も、実質収入は0円なので、もちろん貧困にくくられる。
母子家庭で収入が母親からだけの場合、貧困になっている確率はかなり高い。
実際、自分の家も、生まれながらに母子家庭で、片親収入だったため、おそらく今回の(相対的)貧困の定義に入っていたと思います。
ただ、母子家庭は、医療費がタダだったり、奨学金が借りやすかったり、親宛てに手当もおそらくあったと思うし、国のサポートがいろいろあって、衣食住や進学には特に困らずに過ごせていて、貧困とは感じなかったので、元貧困に属していた子供(笑)として、この定義で貧困とするのにとても違和感を感じています。
2.相対的貧困定義のマジック
問題としている2つ目が、世界的に見て、日本の(相対的)貧困が高い。というもの。
ただ、この相対的貧困と呼ばれる数値データでは、日本のような中間層が厚く、年功序列社会では高く出る。
下記検証してみる。
2-1.年功序列型で、日本の若年世帯は収入は少ない。
日本以外だとほとんど全ての国が、年功序列とは関係ないため、給与所得は、若いから抑えられるということはないと思います。
一方、日本はまだまだ年功序列的な風習は残っており、将来賃金は高くなっていくから、新卒の20代から30代までは所得水準が、他の国と比較して抑えられている場合が多いです。
こうしたことから、日本の子供(18歳未満)を持つ世帯の収入は、他の世界のそれより低く出る一因となるのが想像できます。
2-2.中間層が厚い日本は絶対的貧困は少ない代わりに、相対的貧困は高く出る。
100世帯いる国AとBがあったとします。
○国Aは、3世帯が1億円、他97世帯が年収50万円の、北○鮮のような国だったとします。
この場合、
平均年収は348万5000円ですが、
年収の中央値(50番目の所得)は、50万円です。
相対的貧困は25万円以下の者になるので、相対的貧困者0の国です。
ただし、年収50万(月4万円程度)で生活する人の割合は97%の国です。
○一方、国Bは、所得が正規分布で、中間層が厚い国です。
年収が、
1人が3000万
2人が1000万
7人が900万
15人が800万
25人が600万
25人が400万
15人が300万
7人が200万
2人が100万
1人が0
この場合、
中央値(50番目の所得)が600万。
相対的貧困ラインとされるのが、その半分の300万以下なので、25人が相対的貧困者となり。
『4人に1人が貧困の国』
とPRされてしまったりします。
しかし、B国は、A国のような年収50万以下の人はわずか1人。
もちろん彼らを支える社会保障は充実している国です。
○A国:3%が富の98%を支配し、相対的貧困は0の国。(共産主義国家?!)
○B国:富が平均的に散らばり、分厚い中間層がいる。
しかし相対的貧困割合は、定義上4人に1人と言われている国。
あなたはどちらが住みたい国ですか?
3.日本は弱者保護がかなりよくできている方の国だと思う。
母子家庭で生まれて育ってきた自分からすると、
日本国からの保護が十分にあってか、母親やおばあちゃんの努力のおかげか、自分が楽観的だったからか、困ることはあまり感じなかった、というのが感想です。
繰り返しになるので、多く書きませんが、医療費、給食費、その他無料など、シングルマザー家庭からなのか、所得水準に応じてなのか、日本国には保護が多くあり。
子供心に、母子家庭というだけで、自分はこんなによくしてもらっていいの? と感謝の気持ちでいました。
たぶん、中国やアメリカ、東南アジアなどのシングルマザー家庭と、日本のそれとはかなり恵まれ度合いが違うのではないでしょうか?
なので、正直、自分の子供時代を振り返って、
日本での相対的貧困と定義される子供の暮らしは、
マスコミや一部ブロガーの人が報道するような、
・進学できない、とか、
・学校で疎外感、とか、
・学校辞めて働け、とか、
・身体売らされる、とか、
・日々の食事も困窮、とか、
・病院にかかれない、とか、
ないと思っています。
まとめ
長くなりましたので、述べた3つの論点について再度コメントしておきます。
1で述べた相対的貧困だよ、という点については、
定義をうやむやにして、
・お腹をいつもすかせている子供がいる
⇒(自分だって、スポーツ好きだったのでいつも腹減っていた)。なにより給食費は、片親だったせいか無料だったので困ったような記憶はなかった。
・身体を売る子供がいる
⇒今回のいう貧困のせいではないと思う
・進学をあきらめざるを得ない子供がいる
⇒貸与であるが奨学金が充実しているので、自分は奨学金で慶應に進学できた。
また、奨学金と併用できる、『国の教育ローン』という制度が充実している。
これを使えば、10- 15年返済で300万とか超低金利で借りたりできて、学用品やPCまで何でも使える。母子家庭や低所得者は借りやすい。
奨学金+国の教育ローン=子供が学校に通う上で最強
・モノを買えない子供がいる
⇒まぁある程度は妥協するけど、必需品の教科書なども無料だったと思う。
それ以外のものも、不必要なものを買わないようにすれば、必要なものは買えると思う。
そもそも上であげたように、『国の教育ローン』が充実しているので、問題は少ない。
・病院にかかれない
⇒母子家庭で医療費タダだったけど、所得少ない人も医療費サービスとかあるのでは?
など、
意図的か分からないですが、相対的貧困=かわいそう、絶対的貧困と大差ない、に持っていこうという感じに見えます。
最近では、相対的貧困という言葉を変えて『見えない貧困』=「貧困に見えないけど、貧困」という言葉を使いだしているのも、そうした意図が垣間見れています。
また、上から目線で、
『相対的貧困は、絶対的貧困と同じかそれ以上につらいものだ。』
と決めつけて騙っている人がいたのですが、
母子家庭生まれで元相対的貧困者(笑)の自分からすると、国のサポートが充実していて、特に苦労していなかったのに、逆に、君は貧困だ、と定義されると、性格がひねくれそうに思えます。
2で述べた定義の誤謬については、
もう少しマスコミが、言葉の定義や、根拠を大事にして、Data や数値の裏を読んだ報道も意識してもらればと思っています。
3.日本は比較してみると恵まれた国だなぁと、日本に感謝です。
ということを日曜日の昼下がりにつらつら考えて書いてみました。
*もちろん、物事0か1ではないので、貧困問題は、全て問題なし、と言っているわけではなく、貧困事例や格差拡大の是正は解決に向けて、絶えず努力していく問題です。
ただ、今回のいきなり盛り上がった報道のように、
『世界的に見て、日本はどうなんだ?』とか、
『貧困率が最悪に近い国、日本。』
『日本の6人に1人の子供は救わないといけない状況にある』
とやるのはどうなんでしょう?
というのが今回の趣旨です。
要は、相対的貧困問題に対する違和感、問題の優先順位への違和感、ピント外れの日本たたきの違和感、この3つです。